独自用語
好評止まり(こうひょうどまり)
現場でも上層部でも評判はよく、名刺や労いの言葉は集まるのに、お金を払う顧客が現れず、その先へ進まない新規事業の状態を指す本書の命名のこと。
更新日 。版: ゲラ準拠・第12章改稿版準拠。
序章で命名された状態です。典型例は、点検業務を自動化するサービスがPoCの現場で「便利だ」と評判になり、役員に労われ、展示会で名刺も集まったのに、販売開始から1年で有償契約が1件もないチームです。「いい取り組みですね」は評価の言葉で、購入意思は分かりません。
残酷なのは、関わる全員が「手応え」を感じているせいで、危機として扱われにくいことです。第2章は、好評をくれる象限(User・Non-Mover)にしか会わず、顧客側のAuthorityとの接触がゼロだから好評しか集まらないと配置図で示し、第3章は、実績がそろってから動く多数派から好評だけを集め、実績の前に動ける少数派にまだ会えていない状態だと言い換えます。
第4章はUserから入りUserで止まることを入口とし、第7章はPoC好評のまま有償化で止まる状態を典型的な入口と呼びます。第8章は、好意的な反応を「ニーズの証拠」と数えた瞬間に商談が好評止まりを量産する装置に変わると警告し、過去の行動と支払いの事実を聞くよう勧めます。
本書での位置づけ
初出は序章の節「「いい取り組みですね」は、購入意思を示す言葉ではない」(P16〜19)。第2章「「好評止まり」は配置図から始まっている」(P70〜71)、第3章(P98)、第4章(P105、図4-①(P107)のUser欄)、第7章(P179)、第8章(P192)で「序章で見た好評止まり」として再登場する。
本文より
「私はこの状態を「好評止まり」と呼んでいます。評判はいい。名刺も、労いの言葉も集まる。しかし、その先へ進まない。」(序章)
「「好評止まり」は、決して謎の現象ではありません。配置図のなかで言えば、好評をくれる象限にしか会っていないのだから、好評しか集まらないのです。」(第2章)
関連用語
図版・フレーム名
意思決定4象限マップ
(いしけっていよんしょうげんマップ)
案件の登場人物を「体験への近さ」と「決定への近さ」の2軸で、User・Authority・Promoter・Non-Moverの4象限に置く配置図のこと。営業設計の基本ツール。
独自用語
User(使う人)
(ユーザー(つかうひと))
意思決定4象限マップの第1象限で、体験に近く決定から遠い人のこと。現場の担当者など、プロダクトの価値を最も正確に感じ取る「好評の源泉」だが、財布を持っていない。
独自用語
Authority(決める人)
(オーソリティ(きめるひと))
意思決定4象限マップの第2象限で、決定に近く体験から遠い決裁者のこと。部門長・役員・経営者など予算と決裁を握る人で、この人の署名がなければ現場が盛り上がっても1円も動かない。
独自用語
Non-Mover(動かない人)
(ノンムーバー(うごかないひと))
意思決定4象限マップの第4象限で、体験からも決定からも遠い人のこと。面談は快く受けるが、自分では使わず、決めず、決める人に話を持ち込む動機もない相手を指す。
独自用語
バーンアウト・ループ
(バーンアウトループ)
「良いものを作れば売れるはず」と信じて商談量を増やすほど、刺さらない相手に量を投下し、学びのないまま事業とチームが燃え尽きへ向かう新規事業特有の負のループのこと。
ルール
感想ではなく事実
(かんそうではなくじじつ)
商談の聞き取りと記録において、「反応良好」といったその場の解釈(感想)ではなく、顧客の発言の引用・観測した行動・過去の支払いなどの事実だけを扱う本書の規律のこと。
独自用語
兆し
(きざし)
新規事業で売上より先に現れる売れ始めのサインのこと。顧客の行動と市場の状態の二方向に現れ、売上ゼロの期間に売上の代わりに観測すべき先行指標として本書が名づけた概念。
一般用語(本書での使い方)
アーリーアダプター(市場の16%)
(アーリーアダプター(しじょうのじゅうろくパーセント))
ロジャーズの採用者分類で、実績がそろう前でも自ら判断して動く13.5%の人。本書ではイノベーター2.5%と合わせた市場の16%を、実績ゼロでも買いうる相手として扱う概念のこと。
独自用語
会うべき人
(あうべきひと)
会いやすさではなく、購入の意思決定を動かせるか(Promoter・Authority)と新しさへの態度(アーリー性)で選ぶ、最優先で会う相手のこと。「会える人」の対概念。
FAQ
「いい取り組みですね」と言われているのに売れないのはなぜですか?
本書によれば、それは評価の言葉であって購入意思を示す言葉ではないからです。感想を述べることはタダでリスクがなく、財布を持たないUserや情報収集中のNon-Moverからも集まります。会っていない象限から売上は生まれようがない、というのが第2章の説明です。
好評止まりから抜け出すには、何を確かめればよいですか?
「いい取り組みですね」と言った人のうち稟議書を書いた人は何人いたか、と問い直すことです。購入に近づくと質問は導入時期・条件・予算・関係者・決裁手続きへ具体化するので、好意的な反応ではなく買う人の質問と過去の行動・支払いの事実を確かめます。
出典: 『ゼロイチ営業』(中山健彦・株式会社MarchOn)。更新日 。版: ゲラ準拠・第12章改稿版準拠。引用は1ページあたり2件まで。