独自用語
財布と体験のねじれ(さいふとたいけんのねじれ)
体験価値を受け取る人と、支払いを決定する人が別人であること。多くの商売に程度の差はあれ存在し、BtoBでは組織の階層の中に埋め込まれる構造を指す。
更新日 。版: ゲラ準拠・第12章改稿版準拠。
財布と体験のねじれとは、体験価値を受け取る人(User)と、支払いを決定する人(Authority)が別人であることを指す本書の言葉です。キッズスクールなら夢中になる子どもがUser、月謝を払う親がAuthorityです。ねじれ自体は特別なことではなく、多くの商売に程度の差はあれ存在します。
BtoBでは、このねじれが階層の中に埋め込まれます。担当者の「便利です」は稟議書に書ける言葉にならず、Userに刺さる言葉とAuthorityに刺さる言葉はほとんど別の言語です。またAuthorityだけを攻略して受注し、Userが「上が勝手に決めた」と感じて使わず、更新時に静かに解約される逆向きの見落としもあります。
本書は配置図を描き、「誰に、どんな言葉で話すか」を書き込むことを勧めます。ネスプレッソが業務用から家庭市場へ転じた例のように、製品を変えずとも「体験する人」と「決める人」の重なり方が良い市場を選び直すだけで売れ方が一変することがあります。第5章のビーチヘッド選定にも通じます。
本書での位置づけ
第2章の節「財布と体験のねじれを読む」(P63〜65)で定義され、同章「ネスプレッソが変えたのは製品ではなかった」(P66〜68)で事例化。第5章ではアパレルECが「ねじれの少ない構造」だった理由(P125)と、ビーチヘッドを選ぶ条件②「配置図がシンプルか」(P129)に対応する。
本文より
「体験価値を受け取る人と、支払いを決定する人が別人であること。そのねじれ自体は特別なことではありません。世の中の商売の多くに、程度の差はあれ、ねじれは存在します。」(第2章)
「ねじれは、売るときも、売れたあとも、読み続ける必要があります。」(第2章)
関連用語
図版・フレーム名
意思決定4象限マップ
(いしけっていよんしょうげんマップ)
案件の登場人物を「体験への近さ」と「決定への近さ」の2軸で、User・Authority・Promoter・Non-Moverの4象限に置く配置図のこと。営業設計の基本ツール。
独自用語
User(使う人)
(ユーザー(つかうひと))
意思決定4象限マップの第1象限で、体験に近く決定から遠い人のこと。現場の担当者など、プロダクトの価値を最も正確に感じ取る「好評の源泉」だが、財布を持っていない。
独自用語
Authority(決める人)
(オーソリティ(きめるひと))
意思決定4象限マップの第2象限で、決定に近く体験から遠い決裁者のこと。部門長・役員・経営者など予算と決裁を握る人で、この人の署名がなければ現場が盛り上がっても1円も動かない。
独自用語
体験の言葉と決定の言葉
(たいけんのことばとけっていのことば)
「使いやすい」「現場が喜ぶ」などUserに刺さる体験の言葉と、数字とリスクと比較で語られAuthorityに届く決定の言葉は、ほとんど別の言語であるという本書の指摘のこと。
一般用語(本書での使い方)
ビーチヘッド
(ビーチヘッド)
マーケティングで「最初に上陸する一点」を指す語。本書では、誰に売るかと同時に「誰に(まだ)売らないか」を決め、最初に攻める市場・顧客層を絞る設計のこと。
独自用語
好評止まり
(こうひょうどまり)
現場でも上層部でも評判はよく、名刺や労いの言葉は集まるのに、お金を払う顧客が現れず、その先へ進まない新規事業の状態を指す本書の命名のこと。
FAQ
ねじれがあると、売れないということですか?
いいえ。ねじれは世の中の商売の多くに存在します。問題になるのは、ねじれを読まずに体験側だけを磨き、決める人のための言葉を用意していないときです。まず配置図を描き、相手ごとに話す言語を分けます。
売れたあとにもねじれは関係ありますか?
あります。Authorityだけを攻略して受注しても、Userが「上が勝手に決めた」と感じて使わず、更新のタイミングで静かに解約されることがあります。本書はねじれを売るときも売れたあとも読み続けるよう求めます。
出典: 『ゼロイチ営業』(中山健彦・株式会社MarchOn)。更新日 。版: ゲラ準拠・第12章改稿版準拠。引用は1ページあたり2件まで。