ホーム / BOOK INSIGHTS / 4つのブレーキ
一般用語(本書での使い方)
現状維持バイアス(げんじょういじバイアス)
人が無意識に「今のままでいること」を選んでしまう傾向を指す行動経済学の概念。本書では4つのブレーキの①で、提案が競合より先に戦う「何もしないこと」の正体と位置づけるもののこと。
更新日 。版: ゲラ準拠・第12章改稿版準拠。
Status Quo Bias
現状維持バイアスとは、人が無意識に「今のままでいること」を選んでしまう傾向を指す行動経済学の概念で、1988年にサミュエルソンとゼックハウザーが発表しました。本書では4つのブレーキの①に置き、「最強の競合は「何もしないこと」である」と言い切ります。
新規事業で重要なのは、提案が競合と戦う前に「今のままでいる」という見えない選択肢と戦っており、そこには最初から有利なゲタが履かされているからです。買い手には「現状=コストゼロ」と感じられ、商談では「一旦このままで」というセリフになって現れます。第6章でも、これを上回る「今動く理由」(Why Now)が要ると再び引かれます。
対処は2つです。第一に、倒すべき敵を「現状」と定義し直し、競合比較表を磨く時間の半分を「現状維持のコスト」(見えない請求書)の可視化に振り替えること。第二に、一部門・一期間で始められる形を用意し、やめられる条件を契約に明記すること。「小さく始めて、ダメならやめられる」構造は、値引きよりはるかに強くブレーキを緩めます。
本書での位置づけ
4つのブレーキの①。第1章の節「最強の競合は「何もしないこと」である【現状維持バイアス】」(P36〜39)が初出で、図1-2「買い手ブレーキ診断表」の対処は「現状のコストを可視化する/小さく始めて、やめられる設計にする」。第6章のWhy Nowの導入部とSalesforceの事例でも再登場します。
本文より
「つまり、あなたの提案は、競合と戦う前に、「今のままでいる」という見えない選択肢と戦っているのです。」(第1章)
「第1章で見たとおり、買い手の最強の競合は「何もしないこと」でした。現状維持は誰の説明責任も発生させず、コストもゼロに見えます。」(第6章)
関連用語
図版・フレーム名
4つのブレーキ
(よっつのブレーキ)
買い手の脳に標準装備された、新しいものを買わない方向に働く4つの心理バイアス(現状維持・近視眼・同調性・参照点)を、商談で出る典型セリフと対処とともに整理した基本フレームのこと。
独自用語
見えない請求書
(みえないせいきゅうしょ)
今のやり方にも毎月発生しているのに、請求書として届かないためゼロに見えている手作業の工数・ミスの手戻り・機会損失のコストで、営業が可視化して提案書の冒頭と参照点に置くもののこと。
独自用語
Why Now
(ホワイナウ)
買い手が「いつか」ではなく「今」動く理由のこと。現状維持という最強の競合を上回る動機であり、待つものではなく営業側が顧客の中から掘り当て、醸成するもののこと。
独自用語
参照点バイアス
(さんしょうてんバイアス)
4つのブレーキの④で、人は価格ではなく頭の中の基準(参照点)との比較で高い安いを判断するため、相場のない新しい価値に買い手が手近な参照点を持ち込み「高い」と感じてしまう傾向のこと。
独自用語
近視眼バイアス
(きんしがんバイアス)
法人購買で、担当者が将来の効果より目先の導入負担を重く感じてしまう傾向を本書で名付けたもの。4つのブレーキの②で、「前向きに検討します(=今はやらない)」を生む心理のこと。
図版・フレーム名
8つの「ない」
(やっつのない)
既存事業にはあって新規事業にはない8つの前提(実績・事例・営業の型・紹介の連鎖・価格の相場・予算科目・前例・成功と失敗のデータ)を対比した第3章の比較表のこと。
ページはまだない: 最強の競合は「何もしないこと」
FAQ
現状維持バイアスは営業にどう影響しますか?
商談が盛り上がり課題も合意できたのに、次のアクションが決まらず案件が静かに止まる現象の正体です。買い手は「現状=コストゼロ」と感じているため、提案は競合より先に「今のままでいる」という選択肢に負けます。
現状維持バイアスへの対処法は?
本書は2つを挙げます。①敵を「現状」と定義し直し、現状維持のコスト(見えない請求書)を可視化する。②一部門・一期間で始め、やめられる条件を契約に明記して「変える怖さ」を小さくする。後者は値引きより強く効きます。
出典: 『ゼロイチ営業』(中山健彦・株式会社MarchOn)。更新日 。版: ゲラ準拠・第12章改稿版準拠。引用は1ページあたり2件まで。